不動産業界では、小規模案件や「東急不動産ホールディングスによる学生情報センターの買収」に代表されるような大型案件のほか、“地場の有力企業が譲渡する事例”も増えてきています。1社でそれなりの規模があり利益がでているため、一見すると大手のグループに入る必然性はないように見えますが、事業承継問題・今後の先行きに対する不安などからM&Aを決断される企業が多いのです。

第3回目は、「地域No.1の有力企業が、なぜM&Aによる会社の譲渡を決断したのか?」お伝えします。

親族承継かM&Aかを検討

譲渡企業E社は山本社長(仮称)が創業された会社で、不動産賃貸仲介部門、1万戸を超える物件の管理を行う不動産管理部門、情報力を活かした仕入に強みを持つ不動産販売部門の3部門で構成されており、地域No.1の企業に上り詰めました。経営は非常に安定しており、毎期1億円を超える利益を上げ、無借金経営を継続している非常に優良な企業でした。

 

社内に勤務するご子息には後継の意思がなかった

山本社長は60歳を迎え、自身の引退と事業承継を考えるようになりました。社内にご子息が勤務していたものの、山本社長はご子息の経営能力に不安を感じていらっしゃるようでした。E社は100名を超える従業員を雇用している地場では大きな会社であり、また山本社長自身もこれだけの規模の企業を経営する責任感から、事業承継は成功させなければならないと考えていました。結局、ご子息本人も後継の意思がないことから、ご子息への承継を断念し、大手企業とのM&Aの道を模索し顧問である会計事務所の先生に相談したところ、日本M&Aセンターを知っていただくこととなりました。

 

70社を超える候補から厳選した数社に提案

候補先探索の方針として、山本社長は下記の条件をあげました。

・限定した数社のみへの提案
・上場企業あるいは上場企業に準ずる企業
・従業員の継続雇用・企業名を存続して頂ける企業

日本M&Aセンターからは70社を超える候補先リストを用意し、それを元に提案の方針について山本社長と協議をしました。事業内容・収益性からE社に関心を持つ企業は多数存在すると想定されましたが、山本社長は広く候補先に提案することで情報漏洩が発生するリスクを懸念されていました。

このような段階では、当社では幅広く提案する際は企業名を特定されないよう限られた情報のみを記載した資料(ノンネーム)を作成しますし、詳細提案時には必ず秘密保持契約を締結していますのでその心配はありません。ただし今回の提案の方針としては、まずは山本社長の希望に沿う可能性が高いと思われる数社に限定して提案を開始することとしました。

 

地域の有力企業であったE社のお相手はどのような企業になったのでしょうか?続きは次回お伝えします。

 

※本連載は、2016年11月~2017年4月に全国賃貸住宅新聞にて連載した記事を転載したものです

 

AUTHOR PROFILE

業界再編部 副部長

西田 賢史

一橋大学経済学部卒業。2008年日本M&Aセンター入社以降、中堅・中小企業のM&A仲介に従事。上場企業専門の部署にて、買収から子会社の売却まで幅広い資本政策を支援した後、現在は業界特化型の業界再編部にて、建設・住宅・不動産業界の責任者として多くのM&A成約に取り組む。